ホエータンパク質分離物(WPI)の加熱安定性に及ぼすpH、食塩および塩化カルシウムの影響

藤野 博史・六車 三治男


Summary

近年、カラムによる分離法や膜処理技術などの進歩により、タンパク質を限外ろ過により分離濃縮したホエータンパク質濃縮物(WPC)と、 さらにイオン交換法によりタンパク質濃度を90%以上に高めたホエータンパク質分離物(WPI)が食品素材として開発されている。

WPCは広範なpH領域における高い溶解性、加熱ゲル形成能および高栄養価などの優れた機能特性を有している。 最近、その利用についての検討が始められ、育児用粉乳の栄養的改善、ハム・ソーセージなどの肉製品の増量あるいはバインダーとしての利用、卵白の代替品として菓子・ケーキ類への利用などの検討が行われている。 しかし、肉製品中でのWPCのゲル化能の果たす役割については複雑な要素も多く、まだよく理解されていない点が多い。 一方、WPIは90%以上の高タンパク質含量を示し、乳糖、脂質の含量が極めて少なく、高純度タンパク質食品として育児用あるいは医療用としての利用の可能性が期待されている。 しかし、実用的にはまだほとんで利用されておらず、肉製品への利用も含めて種々の検討が必要である。

ホエータンパク質の溶解性にはpH、溶質濃度、イオン強度、加熱処理などが影響する。 これらの要因の効果についての知見はホエータンパク質の有効利用のために不可欠である。 Varunstatianらは酸ホエーからイオン交換処理によって得られたWPCについて溶解性へのCa2+、Mg2+およびNa+の影響を調査し、 WPCの凝集がそれぞれのイオンによって増加し、とくにCa2+の影響が大きいことを認めている。 これらの影響の程度については実験に供したホエータンパク質製品の種類によって異なるものと考えられる。 とくにWPIの機能特性に関するそれら要因の影響を検討することは重要と考えられる。

そこで、WPIの機能特性に及ぼす加熱処理の影響を検討するために、WPIの加熱安定性に及ぼすpH、食塩および塩化カルシウムの影響を 溶解性を測定すことにより調査するとともに、SDS-PAGEにより、WPIを構成するタンパク質分子への加熱処理の影響についても検討した。


第27号目次に戻る