コスチューム・インスタレーション II

井上 登美子


はじめに

「服飾」とは、時代によって、その内容の解釈が相違されるが、今日一般的には衣服とそれに関する装身具すべてを指すものである。 その起源については従来より多くの説が展開されている。 第一にあげられるのは、身体保護(生理学的必要面)を重視する「環境適応説」であり、 第二にあげられるのは、旧約聖書のアダムとイヴにまつわる有名な「羞恥説」である。 しかし、近年では、なにをもって羞恥とするのかという議論が進められ、慎みや羞恥の感情は生活環境や慣習、民族などによって異なり、 決して本能的ではないという観点から、この説は決定的要因の説とはなりにくいとされる。

このほか、「羞恥説」と同じく、他人の目を気にするという対人的感情を含んだものとしての「異性吸引説」や、 身体を悪い精霊から守るためといった「呪術的動機から始まった説」などがあるが、単一で考えるにはいずれも確証に欠ける。 以上の説いずれも複合させ、近年最も注目されているのが「装飾説」である。 自分を美しく飾りたいというのは人間の本能であり、根源的な衝動の一つであり、また自己保存のための欲求であると考えられる。 人間が衣服に対して求めたものは、必ずしも身体保護だけではなく、そこに「美的価値」を見いだしている。

「美的対象」としての服飾を考えた場合、一つの例として、服装を完全に調和のとれた美しいものにするという、非常に大きな役割をもつものとして「装身具」があげられる。

「装身具」とは、広義的には身につけるものを指し、衣服に関する装飾的な小物のことをいう。 今日、一般的には「アクセサリー」という語で定着しているが、その本来の意味の一部は「ジュエルリー(jewelry)」とされ、金・銀などを含む宝石類・宝石細工のことをさすようである。 現在では、人工的に創作された、それに類するもの全てを呼ぶようであるが、このことからも考えられるように、 筆者が「装身具」に抱くイメージは「光り・輝き・燦めく」というものである。 装身具の歴史は古く、古代エジプトやローマ、ギリシァでその使用が認められており、迷信的な意味からの使用であったが、時代や文化の変遷とともに、次第に装飾的な要素の方が強くなってきたということである。

人間は、ある時は霊力を備えるための手段として、光り輝くものを身に付け、またある時は不変なるものの象徴として燦めくものへの畏敬の念を抱いてきたといえよう。 しかし、そこにある本当の意味は、「光り・輝き・燦めく」ものが美しいと感じる「美的感性(本能)」とでもいうべきものではないだろうか。 言い換えれば、「光へのあこがれ」ともいえよう。

今回の「コスチューム・インスタレーション II」では、「光」でも「光源」によるものではなく、 「反射光」に限定し、(1)光り・輝き・燦めく」服飾素材や技法を、資料文献よりいくつか探索し、服飾において「光る」ことの意味や役割を考え、 (2)服飾における「光る」イメージを具体的に展開させるためにコスチュームを制作し、実証的に「光る」ものの効果を見ていくことである。 更に、(3)「光沢を放つものは美しく、心をひかれるものである」という視点から、前回の東筑紫短期大学第27号研究紀要で発表の「コスチューム・インスタレーション I」と同じく、 「空間」までをも抱合した、一つの表現としての展開を試みる。


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