「生活」研究におけるライフスタイルの捉え方についての1考察
−家政学方法論 (2)−

花崎 正子


ライフスタイル論の「生活」研究への導入

本研究の目的は、「生活」研究におけるライフスタイルの捉え方を、家政学の目的である「生活向上」「人類の福祉」への貢献との関わりで考察し、その意義を明らかにすることにある。

わが国におけるライフスタイル概念は、1970年代、先ず、マーケティング論の中に取りいれられていった。 それは、経済社会の急速な進展に伴って生じた消費者ニーズの変化に、これまでの販売方式では対応できなくなってきたことによるものであった。 すなわち、「消費者を個性を持った生活者と捉え、それぞれの生活者の個性にアピールする商品でなければ売れない」ということの認識からであった。 そして、ライフスタイル概念は、マーケティング論の形成過程で、生き方や生活態度などの生活意識の問題に収斂されていった。

また、生活研究においても、生活意識・生き方研究は蓄積されていたが、ライフスタイル論の生活研究への導入は、生き方や生活態度を分析の基軸に据えて実施されてきた。 実際、筆者等も、生活研究において、生き方を分析軸に据え、解析を行ってきた。

神原文子氏は、「ライフスタイル分析の社会的要請」として、全体社会が変貌する中で、個人と社会の関わり方原則が「社会中心パラダイム」から「生活者中心パラダイム」へ変化したこと、その変化と連動して発現した生活原則が「個人化」「私事化」「主体化」「有意味化」であることをあげ、「家族研究におけるライフスタイル分析の意義」を考察している。

このような、生活主体の「個」としての自己自身への限りない関心の深まりは、さらに、自分以外の生活主体への関心を深めることになり、それはまた「個性」への認識と人間観を深化させてきたと解される。 このように考えれば、ライフスタイル概念は、分析概念としてだけでなく、認識方法概念として据え得るのではないかと考えられるのである。

では、ライフスタイル概念はどのように定義されてきたのであろうか。

松本康氏は、「生活価値パターンに依存した、諸関係および諸資源に対する選考のパターン」としている、

寿里茂氏は「個人が、自らの価値の序列に従って社会的関係を結び、生活資源の獲得やこれを変換・享受する活動において一定の方向を選択し、これに収斂することで成立する」としている。

神原文子氏は、それまでの研究者の定義を踏まえ、その捉え方を次のように整理している。 要約すると、生活主体は、生活課題の達成に、自分にとって有意味な価値原理に依拠し、生活システムをくみたてる。 その生活システムの組み立てかたは、個々の生活主体の依拠する価値原理の相違、選択できる生活諸関係や生活諸資源の相違によって、異なったパターンを呈する。 その組み立てられた生活システムの断面に現れるパターンの特徴、としている。

以上から、ライフスタイル概念の特徴は 1.生活主体への着目、2.その生活主体それ自身が抱く「価値」への着目、3.その価値による、生活主体の「主体」としての生活諸資源・諸関係との独自な生活システムの組み立て、4.収斂点としての組み立てられ型、と捉えられていると解することができよう。

では、家政学における生活研究の方法として、ライフスタイル概念は、どのように捉えることができるのであろうか。


第33号目次に戻る