本報告の目的は、「学生の働き方」意識を性別役割分業観との関わりで検討し、学生の「生」の実現に寄与する「働き方」を探ることで、就業教育に資することである。
私は、これまで「生活探求」を重ねてきたが、その中で、人が「働く」ということは、人が「生きる」という総体の中で把握される必要があるのではないか、中でも、「性別役割分業」との係わりでの見直しが必要ではないかと考え探求してきた。 本件究もその一環としてである。
かって、「働くということ」は、生活の一部であった。 しかし、賃金労働の外部化は、「男は外、女は家庭」という性別役割分業を形成し、それが「人」の生きる規範として固定化されてきた。 この固定化がとくに女性の就業を困難にし、ひいては、未婚率の増大、少子化、男女の晩婚化などをもたらし、女性の、ひいては男性の「生」の実現を阻んできた。
言うまでもなく、「性別役割分業」の解消については、1975年の国際婦人年以降、行政レベルでも取り組まれ、とくに1979年には「女子差別撤廃条約」で謳われた。 しかし、例えば、我が国の GEM (Gender Empowerment Measure) が、測定可能な70カ国中44位であることや、男女間の賃金格差は、男性100に対してスウェーデンは91.2であるが、我が国は65.3であるように、「性別役割分業」に起因すると考えられる女性の就業上の問題は、依然として存在している。 このことは、「職場における男女平等感」をみても、男性女性ともに「男性優位感」(男性58.3%、女性62.7%)が強く、したがって「平等感」(男性29.7%、女性20.3%)は男性女性ともに低いこととも呼応する。
また、労働市場をみると、例えば、近年のフリーターの増加は著しく、中でも女性の割合が多く、とくに女性の「働き方」意識の問いなおしが迫られている。 これは、経済のグローバル化の進展に伴う経済状況の変化など社会的要因によるところも大きいが、そのような状況だからこそ「働く」主体の主体としての「働き方」意識が問われているとも言えよう。
しかし、これは、ひとえに女性だけの問題ではなく、人が人としてその「生」を実現するためには、男性にとっても、克服されなければならない問題である。
そこで、ここでは、「学生の働き方」意識と (1)性別役割分業観の具体的展開としての 1.生き方意識、2.家事分担意識、3.専業主婦意識との関連で検討し、「生」の実現を阻む要因を明らかにし、さらに (2) 性差観・性別役割分業観を取出し、検討・考察することで、「学生の働き方」意識を創出する背景要因を探り、「学生の働き方」意識の変革に寄与する要因を明らかにし、就業教育に寄与する資料を提供したい。